当社グループは、銅の精錬と電線の製造を祖業とし、これまで多様な製品を生み出してきました。その過程で電線の被覆材や光ファイバ、無線技術が加わり、「メタル」「ポリマー」「フォトニクス」「高周波」の4つのコア技術が確立され、この技術基盤を強みに時代の変化に応じて事業成長を続けてきました。
一方で、こうした多様な事業展開が故に、「何をしている会社なのか」がわかりにくくなってしまったことも事実です。そのなかで、2024年3月に制定した「古河電工グループ パーパス」では、当社グループの存在意義を明確化しました。パーパス「『つづく』をつくり、世界を明るくする。」を軸に、真に豊かで持続可能な社会の実現に貢献する経営を推進することで、社会になくてはならない企業グループに進化させていきたいと考えています。
また、パーパスに基づく経営推進を実現するために、その浸透活動も積極的に行っています。社内ではパーパスを知り、理解・共感を促すワークショップを実施するなど、従業員一人ひとりがパーパスを自分ごととして捉え、自らの業務とのつながりを意識する機会を増やしています。今後も取組みを継続していきます。
「中期経営計画2022-2025(25中計)」では、中長期的な企業価値向上に向けた取組みを推進してきました。2022年度から2023年度にかけては、半導体不足による自動車事業の不振や特に欧米での通信キャリア市場の冷え込みといった外部要因に加え、成長市場の見立てにおける課題など厳しい局面が続きました。一方、2024年度は自動車部品事業やデータセンタ関連製品等を扱う機能製品事業での収益拡大、情報通信ソリューション事業の収益回復などにより、25中計の目標値に近づく重要な1年となりました。特にデータセンタ関連市場は活況で、データセンタ向け放熱・冷却システムは事業成長のドライバーの一つになっています。
2025年度は、25中計の最終年度として数値目標の確実な達成とともに、「古河電工グループ ビジョン2030」に向けた戦略的布石を打つ重要な局面です。将来を見据えた事業ポートフォリオの再構築を通じた中長期視点でのアクションが、今後のさらなる成長期待につながると考えています。
事業ポートフォリオは固定的なものではなく、外部環境や社会ニーズの変化に応じて常に見直しを要する「動的」なものと捉えており、最適な状態を維持し続けることが重要です。そのためには、新たな事業の芽を継続的に生み出しつつ、一方で役割を終えた製品群については縮小・撤退を進めることが欠かせません。この新陳代謝のサイクルを健全に回し続けるために、25中計では「既存事業の収益最大化の徹底」と「新事業を生み出す基盤の整備」が共存する経営体質の構築が必要と考え、取り組んできました。
25中計では「ESG経営の基盤強化」を掲げ、気候変動への対応や人的資本の強化、機関設計変更等のガバナンス強化を進めました。また、こうしたESG経営の推進、さらには事業ポートフォリオ変革を進める当社グループの原動力として、無形資産の活用は非常に重要です。
光ファイバの開発加速・需要拡大期に製造工程のエンジニアとして入社した私自身も、自由な風土のなかで自ら課題を見出し、周囲と協力して解決していく経験を積んできました。当社グループには、パーパス制定以前から企業文化の土台として脈々と流れる「人を信じて任せる風土」があります。自分が求めているものを自分の手で探すことができる人材の育成、それを可能にするオープンな対話や周囲の協力が得やすい環境づくり、それらが人的資本強化において重要な観点ではないかと思います。
資本コストを上回る利益を出し続ける、つまり「企業として価値を生み出し続けている状態」を明確に示すことが必要だと考えています。そのために導入したのが「FVA(Furukawa Value Added)」という指標で、事業の継続か縮小・撤退かを判断する一つの軸にもなります。足元ではこのFVAが全体としてプラスに転じてきており、ここまでお話ししてきた取組みが数字としても表れ始めていると実感しています。
また、こうした資本効率の話だけでなく、もっとシンプルに「きちんと利益を出している会社であるか」という視点も当然重要です。現状の営業利益率は3~4%ですが、これを2桁に近づけていく。営業利益額では、まずは年間で500億円を安定的に超えることを目指し、その先には1,000億円という水準も視野に入れています。常に一定以上の利益を出せるレジリエントな企業グループになる。その姿を2030年のゴールイメージに掲げ、そして何よりも「実行重視」の経営を推進する。そうすれば、十分に達成可能であると考えています。
詳細は、統合報告書2025もあわせてご覧ください。
2025年10月