Furukawa Electric Group’s Sustainability 古河電工グループのサステナビリティ

取締役鼎談(社外取締役×代表取締役)

社外取締役メッセージ

2030年のあるべき姿を描いた「古河電工グループ ビジョン2030」のもと、現在、当社グループは組織再編やM&A等を進め、事業ポートフォリオ変革の実行フェーズに踏み出しています。こうした変革を加速させる取締役会の役割や、機関設計変更などコーポレートガバナンス強化に向けた直近の取組み等について、社外取締役の塚本氏と住田氏、代表取締役の宮本が語り合いました。

事業ポートフォリオ変革と取締役会の関与

実行段階に入った変革の取組みを評価

宮本: 当社グループでは、「古河電工グループ ビジョン2030」のもと、「中期経営計画2022-2025(25中計)」において事業・組織再編やM&A等、戦略的な投資などの取組みを着実に進めてきました。こうした事業ポートフォリオ変革のアクションについて、どのように評価されていますか。

塚本: ビジョン2030で事業ポートフォリオのあるべき姿を描き、25中計のもと実現に向けた果断なアクションが実行され、その成果が出始めたと感じています。直近では2025年4月に情報通信ソリューション領域における光ファイバ・ケーブル事業において、Lightera Holding合同会社(以下、Lightera)の設立などグローバルでの大規模な組織再編も行われました。
私は、事業ポートフォリオ変革にはリスクテイクを伴う決断とアクション、それを実行するための安定した経営基盤が不可欠と考えます。25中計スタート時には厳しかった当社グループの業績も足元では回復し、ようやく描いたビジョンをダイナミックに実行する段階に入ってきたのだと思います。

住田: 25中計前半は確かに業績が振るわない状況ではありましたが、取締役会としてはスピード感のある変革の必要性を助言してきました。そうしたなかで着実に手を打ちつつ、特に2024年度からは業績も回復してより事業ポートフォリオ変革の動きが加速したように思います。特にデータセンタ関連に注力投資するなど、将来に向けた成長ドライバーの軸が見え始め、ビジョン2030で描いた姿の具現化に近づいてきたと感じています。

宮本: 特に25中計の前半は変革を「やり抜く」という社内の意識や体制が整っておらず、取締役会でも厳しい声がありました。そこで、経営指標管理としてROIC等の導入や事業ポートフォリオ検討委員会の設置など、変革を実行に移す判断基準や規律の整備も進めてきました。こうした取組みも踏まえて、ようやく具体的なアクションが成果に結びついてきたと思っています。

変革に対する覚悟が見えたLightera設立

宮本: 直近の事業ポートフォリオ見直しの動きのなかで、特に光ファイバ・ケーブル事業における組織再編は大きなトピックでした。それが、先ほど塚本取締役より言及があったLighteraの設立です。これまで光ファイバ・ケーブル事業部門(日本)、OFS Fitel, LLC(北米・欧州)、Furukawa Electric LatAm S.A.(中南米)の3事業ユニットそれぞれが地域ごとに異なる特性や強みを活かした事業展開を進めてきましたが、データセンタ市場向けの事業等で最適なグローバルサプライチェーンの構築とグローバル視点での迅速な意思決定の必要性が高まり、これら3つを統合して一体感のある事業運営体制に切り替えました。

塚本: まずは、今後の成長を見据えてこうしたグローバルでの組織再編という大きなプロジェクトが動き出した点を評価したいと思います。しかし、課題はまだ多く残されています。グローバルでの需要動向に的確に対応できる営業体制や生産体制を構築し、一つひとつの課題を確実に解決していく必要があります。強い覚悟を持って取り組み、確かな実績につながることを期待します。

住田: Lighteraの設立には、「グローバル視点で経営を実行する」という強いメッセージが込められていると感じます。これを単なるメッセージで終わらせることなく、取締役会としても引き続き注視していくつもりです。

宮本: 確かにLighteraは、グローバル視点での事業運営や経営推進に対する当社グループの本気度や覚悟を示した一つのかたちでした。ただ、まずは組織再編で「器」を整えた状態であり、これからがスタートだと思っています。市場変化のスピードは速く、機を逃さないよう、しっかり実績につなげて「やり切る」覚悟です。

事業ポートフォリオ変革を後押しする取締役会

宮本: 事業ポートフォリオ変革を加速させる一つの手として、25中計では「戦略投資枠」を設けてM&Aや資本提携を集中的に推進してきました。当社グループでは長らく非連続な投資に取り組んでこなかったため、制度の運用開始当初は十分に活かし切れていなかったのも事実ですが、今ではその活用が進んで成長投資に対する社内の意識や行動にも良い変化が見られます。この戦略投資枠に関しては、取締役会においてもさまざまなご意見や議論がありました。

塚本: 取締役会では、「なぜ戦略投資枠をもっと使い、アクションを起こさないのか」と繰り返し述べてきました。経営において常に私が意識しているのは、「痛みを伴いながらも、しがらみを断ち切り、決断し行動すること」。よりアグレッシブに、本気で事業ポートフォリオ変革に取り組むべきであると申し上げました。
そうしたなか、直近では(株)白山や旧富士通オプティカルコンポーネンツ(株)の資本提携をはじめ、中長期の成長に向けたM&A案件が出始めました。戦略投資枠の活用が進んで案件のパイプラインも整ってきており、複数の選択肢から最適な投資を選べるような体制になりつつあるのは良い傾向です。

住田: 当社グループは事業領域が多岐にわたることから、設備投資や研究開発投資も分散傾向にあり、投資できる金額にはどうしても一定の制約があります。これまで社会インフラを支えてきたBtoB企業としての歴史、そしてその延長線上にある持続的な成長を志向するという背景があるのだと思いますが、「集中的に投資を行ったほうが成長につながるのではないか」、また「資産売却等で得たキャッシュをどう成長投資に活かすか」など、取締役会では何度も議論を重ねました。

宮本: 事業ポートフォリオの最適化については、今後も取締役会での議論を継続していく必要があると感じています。

現古河ファイテルオプティカルコンポーネンツ(株)

変革を支えるコーポレートガバナンス強化

監督機能強化を狙った機関設計変更

宮本: 当社は、取締役会の監督機能強化と執行・監督の分離を目的として、2025年6月に監査等委員会設置会社へと移行しました。この機関設計変更に至った背景や経緯、またご意見等をお聞かせください。

塚本: 機関設計変更により、組織のかたちを変えて変革を行う。この発想は以前からあったものですが、執行力強化に向けた森平社長の強い思いや経営意思の反映として、このたびの監査等委員会設置会社への移行となりました。事業ポートフォリオ変革が進み、当社グループが成長フェーズに入りつつある今、その点でも良きタイミングで実行できたのではないかと思います。
機関設計変更というのは、形式的なものではなく、組織の本質に関わる重要な問題です。だからこそ、「本気でコーポレートガバナンスを強化するなら、なぜ指名委員会等設置会社ではないのか」といった問いなども投げかけました。こうした背景や経緯も踏まえて、今回の機関設計変更、監査等委員会設置会社への移行という選択は的確だったと私は受け止めています。

住田: 私も今回の変更は、会社として大きな意思決定だったと感じています。機関設計を変えたことは、「この会社は変わろうとしている」という明確な意思表示になったと思います。
一方で、監査役6名から監査等委員3名になることに対し、「監査の質が下がるのではないか」という懸念も耳にしました。その指摘も理解できますが、当社グループのような大規模な組織では、監査役監査であっても監査等委員会による監査であっても、内部統制やリスクマネジメントの仕組みを前提として監査が実施されます。大切なのは、それらの仕組みのモニタリングを含めて内部監査との連携を強化し、グローバル企業としてふさわしい監査機能を築くことです。

宮本: 機関設計の変更を契機として、社内外の取締役が対等に大所高所で議論できる関係になることが望ましいです。そのためには、執行側はさらに事業戦略を磨いてその実行力を高め、取締役会は中長期的な視点で濃密な議論を行う環境を整える必要があります。今回の機関設計変更は、当社グループの経営力が一段上のステージに移行する変革の出発点になると確信しています。

取締役会の実効性を高める良質な議論

宮本: これまでの取締役会の実効性について、お二人の評価をお聞かせください。例えば、アジェンダの設定や議論の深度、取締役間で情報や意見を交換しやすい環境になっているか等も含め、広い視点からご意見をいただけますか。

住田: 毎年行われる取締役会の実効性評価においては厳しい意見も多く、幹事社外取締役から執行側に対してしっかり意見も伝えています。取締役会の実効性向上につながることは何でもやるというスタンスです。機関設計変更後は今以上に大所高所な重要議論に集中できるよう努め、そこには社外取締役の力量も一層問われるものと感じています。

宮本: 今後も皆様とより質の高い議論を行うためには、私たち執行側としても、情報の提供や議論の場の設定などに工夫が必要だと考えています。議論の質向上に対する社外取締役としてのご意見、要望等はありますか。

住田: 経営会議の資料や議事録の共有は大変ありがたく思っていますが、それでも社内取締役との情報差はあるため、取締役会や執行側と社外取締役による意見交換会の場だけでは議論の時間が不十分と感じる時があります。課題によって、たとえば中期経営計画等の議論の際にはオフサイトミーティングを行うなど、集中的な議論の場を別途設けても良いと思います。

塚本: 私からは2点申し上げます。一つは、社内外取締役の関係のさらなる進化です。質の高い議論を行うために、社外取締役は社内の執行側が抱く問題意識と経営方針への深い理解が不可欠です。それらを正しく知ることで、社外取締役は的確に意見を述べることができ、その異なる視点からのコメントが社内との相互作用を生み出して真に価値のある議論が可能になるのだと思います。
もう一つは、生成AI時代における取締役会のあり方についてです。AIは問いに答えることはできますが、「正しい問いを立てる力」はありません。AIに代替できない本質的な問いを発する力が、これからの取締役会の議論の質を左右すると考えます。

中長期的な成長への期待と展望

宮本: 最後に、中長期的な視点から今後への期待や展望など、コメントをいただけますか。

住田: 当社グループの事業は主に社会インフラに関わる長期視点の取組みが多く、今は2030年以降を見据えた種まき期にあります。一方で、足元のキャッシュ創出と利益確保も不可欠であり、中長期視点と短期成果のバランスが課題です。取締役会としては、このバランスを保ちながら挑戦を後押ししていきたいと思います。

塚本: 25中計のもと、業績回復とともに事業ポートフォリオの変革が実行段階に入りました。今後は、より中長期的な成長を見据えた建設的な議論がますます重要になると考えます。また、監査等委員会設置会社への移行は、決して「守り」のガバナンス強化ではありません。むしろ企業価値向上につなげる「攻め」の姿勢が問われるものだと捉えており、私たち社外取締役への期待や責任も一層高まると認識しています。

宮本: 今回、お二人との鼎談を通じて、当社グループが今まさに「成長のスパイラル」に乗りつつあることを改めて実感しました。25中計では着実に変革を進めており、この歩みをさらに加速させて、2030年に向けた確かな成長軌道を描けると確信しています。私たち執行側は、執行力に一層磨きをかけながら、社外取締役の皆様とともに、持続的な企業価値向上に取り組んでいきたいと思います。

2025年10月

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